アプリケーションに戻る BEACON の使い方
目次
はじめに 1. データ 2. 震源 3. 計算条件 4. 出力(CSV) 5. 図 6. 例題 7. 前提条件と適用範囲 用語索引
はじめに BEACON は,K-NET・KiK-net および気象庁の強震記録をまとめて読み込み,フィルタ処理,速度波形,応答スペクトルおよび計測震度を一括して求めるアプリケーションである。観測点の分布図,距離減衰の図,波形とスペクトルの比較図を作り,一覧を CSV で出力する。計算はすべてブラウザ内で行い,記録は外部に送信しない。
1. データ 次の記録を,圧縮されたまま読み込むことができる。ファイルの種類は中身から自動で判別する。
K-NET [1-1] :.NS / .EW / .UD の3成分を1観測点として組にする。
KiK-net [1-1] :.NS2 / .EW2 / .UD2(地表の記録)を用いる。
気象庁 [1-2] :強震波形の CSV。
tar.gz・tar・gz・zip は,展開せずにそのまま読み込むことができる。フォルダごとのドラッグおよび追加読込にも対応する。
加速度は,ヘッダの Scale Factor を掛けて cm/s2 に換算する。記録開始時刻は,K-NET・KiK-net が Record Time の15秒前,気象庁が INITIAL TIME である。
表1.1 読み込めないときのメッセージと対処
メッセージ 原因と対処
ヘッダを読み取れません K-NET・KiK-net の記録として読もうとしたが,ヘッダの Station Code,Scale Factor または Sampling Freq(Hz) が見つからない。ヘッダを削除した記録や,表計算ソフトで編集した記録では起こる。取得した元のファイルを用いる。
成分(Dir.)を判別できません K-NET・KiK-net のヘッダの Dir. が NS・EW・UD(KiK-net の地中記録では 1〜6)のいずれでもない。拡張子だけを変えたファイルでは起こる。
サンプリング周波数を読み取れません 気象庁 CSV として読もうとしたが,SAMPLING RATE の行が見つからない。
NS・EW・UDの見出し行が見つかりません 気象庁 CSV の列見出しの行が見つからない。見出しを削除したファイルでは起こる。
ZIPの形式を読み取れません ZIP として読み取れない。ファイルが壊れているか,分割された ZIP である。展開してから読み込む。
参考文献
[1-1] 国立研究開発法人 防災科学技術研究所:強震観測網 K-NET,KiK-net,https://www.kyoshin.bosai.go.jp/[1-2] 気象庁:強震波形データ,https://www.data.jma.go.jp/
2. 震源 震源の諸元(発生時刻,緯度,経度,深さおよびマグニチュード)は,計算によって求めるのではなく,記録ファイルに記載された気象庁の震源情報を読み取って設定する。読み取る項目は次のとおりである。
K-NET・KiK-net :ヘッダの Origin Time,Lat.,Long.,Depth.(km) および Mag. の各項目。Mag. は気象庁マグニチュードである。
気象庁 CSV :SITE CODE 行に続く震央緯度,震央経度,深さ,マグニチュードおよび発生時刻。発生時刻は Excel のシリアル値(日本時間)で記載されており,0.01 秒単位の時刻に換算する。
複数の記録に震源情報がある場合は,手入力,気象庁 CSV,K-NET・KiK-net の順に優先する。手入力で修正した値は,その後に記録を追加読込しても上書きしない。異なる地震の記録が混在する場合は,最初に読み込んだ地震の震源を使用し,ログに注意を表示する。
震源の諸元は,震央距離・震源距離の算出と,波形の時間の基準(発生時刻を0秒とする)に使用する。発生時刻が得られない場合は,記録開始時刻を0秒とする。震央距離 Δ は,地球を半径 R = 6371 km の球とみなし,震央と観測点の緯度・経度から大圏距離として式(2.1)により算出する。震源距離 X は,震央距離と震源深さ D から式(2.2)により算出する。観測点の緯度・経度は,K-NET・KiK-net ではヘッダの Station Lat.・Station Long.,気象庁 CSV では LAT.・LON. の値を用いる。
(2.1)
ここで,
Δ :震央距離(km)R :地球の半径。6371 km とするφe ,λe :震央の緯度,経度φs ,λs :観測点の緯度,経度
(2.2)
ここで,
震源は点として扱っており,断層面の広がりは考慮していない。
3. 計算条件 3.1 波形の処理 「計算する」をクリックすると,読み込んだすべての記録を処理する。条件は「詳細設定」で変更する。処理は次の順で行う。
換算とオフセット除去 :Scale Factor を掛けて cm/s2 とし,記録全体の平均値を差し引く。
フィルタ :なし・ローパス・ハイパス・バンドパスから選択する。特性は Butterworth[3-1] ,Chebyshev I[3-2] または Bessel[3-3] ,次数は2〜8である。Chebyshev I の通過域のリップルは既定で 0.5 dB とし,詳細設定で変更できる。いずれもアナログ原型フィルタを,遮断周波数をプリワープしたうえで双一次変換して設計する[3-2] 。位相は,前後2回適用して位相のずれを無くすゼロ位相(零位相)と,1回だけ適用する因果から選択する。初期値はハイパス 0.05 Hz,Butterworth 4次,ゼロ位相であり,前後にゼロを付加して端部の影響を抑制する。
速度 :フィルタ後の加速度を台形則で積分する。
擬似速度応答スペクトル :減衰定数 h ,周期の範囲および点数(等間隔・対数等間隔)を指定する。1自由度系の応答は,区分線形の地動に対する厳密解[3-4] で算出する。
水平合成(H ) :NS と EW の同じ時刻のベクトル和を求め,その最大値を用いる。
PGA・PGV :フィルタ後の波形から算出する。速度はフィルタ後の加速度を台形則で積分したものであり,積分後にフィルタを掛け直すことはしない。積分のたびに掛け直す扱い(PRISM)と比べると,同じ記録でも PGV が数 % 異なる。
計測震度 :気象庁の方法[3-5] による。オフセットを除いた3成分を用い,上のフィルタは通さない。
0.005 0.01 0.05 0.1 0.5 1 5 0 0.5 1 Butterworth Chebyshev I Bessel f (Hz) 振幅比 図3.1 ハイパスの特性の比較(遮断 0.05 Hz,4次,fs = 100 Hz)
Butterworth は通過域が平坦であり,Chebyshev I は遮断が急なかわりに通過域にリップルをもつ。Bessel は位相の直線性を重視するため遮断が緩やかである。なお,本アプリケーションの Bessel は群遅延で正規化しているため,指定した遮断周波数での振幅比は 1/√2(−3 dB)にならない。
この3種は,アナログ原型から設計する IIR フィルタの代表であり,それぞれ通過域の平坦さ,遮断の急峻さ,位相の直線性(波形の保存)という異なる性質を重視している。阻止域にリップルをもつ Chebyshev II や楕円フィルタは,遮断を急にする点で Chebyshev I と役割が重なるため採用していない。
0.005 0.01 0.05 0.1 0.5 1 5 0 0.5 1 因果(1回) ゼロ位相(前後2回) f (Hz) 振幅比 図3.2 ゼロ位相と因果の振幅特性(Butterworth 4次,遮断 0.05 Hz)
ゼロ位相では前向きと後ろ向きに1回ずつ適用するため,振幅特性は1回適用した場合の2乗になる。したがって遮断周波数での振幅比は 1/√2 ではなく 1/2 である。位相のずれは生じないが,因果性は失われる。
3.2 計測震度の算出 3成分の加速度をフーリエ変換し,式(3.1)〜式(3.4)の3つのフィルタ(周期効果,高周波遮断,低周波遮断)を掛けて時刻歴に戻す[3-5] 。3成分のベクトル和 a (t ) を求め,|a | ≧ a 0 となる時間の合計が 0.3 秒となる a 0 から式(3.5)で計測震度 I を得る。
(3.1)
ここで,
F1 (f) :周期の効果を表すフィルタ。低い振動数ほど大きく評価するf :振動数(Hz)
(3.2)
(3.3)
ここで,
F2 (f) :高振動数側を除去するフィルタy :振動数を 10 Hz で割った値
(3.4)
ここで,
F3 (f) :低振動数側を除去するフィルタ。0.5 Hz より下で急激に小さくなる
(3.5)
(小数第3位を四捨五入し,第2位を切り捨て) ここで,
I :計測震度a0 :3成分のベクトル和が,それ以上となる時間の合計が 0.3 秒となるときの加速度(cm/s²)
0.05 0.1 0.2 0.5 1 2 5 10 20 0.02 0.1 1 2 f (Hz) フィルタの倍率 0.5 Hz 付近で最大 図3.3 計測震度に用いるフィルタの振幅特性(F 1 (f )·F 2 (f )·F 3 (f ))
図3.3のとおり 0.5 Hz(周期 2 秒)付近で倍率が最大となり,木造建物に影響の大きい 1〜2 Hz 付近を重く評価する特性をもつ。
参考文献
[3-1] Butterworth, S.: On the theory of filter amplifiers, Experimental Wireless and the Wireless Engineer, Vol. 7, pp. 536-541, 1930[3-2] Oppenheim, A. V. and Schafer, R. W.: Discrete-Time Signal Processing, 3rd ed., Pearson, 2010[3-3] Thomson, W. E.: Delay networks having maximally flat frequency characteristics, Proceedings of the IEE, Part III, Vol. 96, No. 44, pp. 487-490, 1949, https://doi.org/10.1049/pi-3.1949.0101[3-4] Nigam, N. C. and Jennings, P. C.: Calculation of response spectra from strong-motion earthquake records, Bulletin of the Seismological Society of America, Vol. 59, No. 2, pp. 909-922, 1969, https://doi.org/10.1785/BSSA0590020909[3-5] 気象庁:計測震度の算出方法(平成8年気象庁告示第4号)
4. 出力(CSV) 全観測点またはチェックした観測点について,加速度,速度,応答スペクトルおよびデータベース(一覧)を出力する。並びは水平合成の PGA の大きい順である。波形とスペクトルの CSV は,1行目が観測点コード,2行目が Dir,3行目以降が数値であり,1列目は時間(発生時刻を0秒とする)または周期である。
画面上部の「設定」から,震源および計算条件の入力値を .bcn ファイルとして保存し,後から読み込むことができる。読み込んだ記録は保存の対象外であり,設定を読み込んだあとに記録を読み込み直す。Web 上で開いた Chrome または Edge では,「上書き保存」により同一のファイルに書き戻すことができる。その他の環境では,保存のたびにファイルをダウンロードする。
5. 図 5.1 観測点の分布
観測点の分布 :計測震度,PGA または PGV を色で表示する。背景地図は地理院タイルまたは CARTO から選択する。点をクリックするとチェックが付く。
距離との関係 :横軸に震央距離または震源距離,縦軸に PGA・PGV・計測震度をとる。距離減衰は,司・翠川(1999) の式[5-1] ,観測データの回帰,または係数を直接入力した式を重ねて表示できる。なお,司・翠川の式の距離は断層最短距離であるが,ここでは選んだ距離をそのまま当てている点に注意する。
比較 :チェックした観測点(最大12点)の加速度波形,速度波形および擬似速度応答スペクトルを,重ね描きまたは縦並びで表示する。スペクトルには告示スペクトル L2(平12建告1461号[5-2] ,Z = 1.0,第2種地盤の簡略式)を重ねて表示できる。p S v = S a ·T /2π で換算している。
5.2 距離減衰式 司・翠川(1999)[5-1] の最大速度の式を式(5.1)に示す。M w はモーメントマグニチュード,D は震源深さ(km),X は距離(km),d は震源の種類による係数(地殻内 0,プレート間 −0.02,プレート内 0.12)である。気象庁マグニチュード M j から換算する場合は式(5.2)[5-3] による(上限 8.3)。工学的基盤(V s 400)とするときは 1.31 倍する。
(5.1)
ここで,
PGV :最大速度(cm/s)Mw :モーメントマグニチュードD :震源深さ(km)d :震源の種類による係数。地殻内 0,プレート間 −0.02,プレート内 0.12X :距離。原論文では断層最短距離(km)
(5.2)
ここで,
Mj :気象庁マグニチュードMw :モーメントマグニチュード。上限 8.3 とする
1 2 5 10 20 50 100 300 1 10 100 地殻内 d = 0 プレート間 d = −0.02 プレート内 d = 0.12 X (km) PGV (cm/s)図5.1 震源の種類による距離減衰の違い(M w = 6.77,D = 12 km,硬質地盤 V s 600)
縦軸を計測震度とした場合は,式(5.3)[5-4] により最大速度から換算した曲線を重ねて表示する。
(5.3)
ここで,
5.3 告示スペクトル 平12建告1461号[5-2] による加速度応答スペクトル S a を,式(5.4)により擬似速度に換算して重ねて表示する。地盤種別による違いを図5.2に示す(Z = 1.0,L2)。
(5.4)
ここで,
p S v :擬似速度応答スペクトル(cm/s)Sa :告示による加速度応答スペクトル(cm/s²)T :周期(s)
0.02 0.05 0.1 0.2 0.5 1 2 5 10 1 10 100 第1種地盤 第2種地盤 第3種地盤 T (s) pSv (cm/s) 図5.2 告示スペクトル(L2,Z = 1.0)の擬似速度表示。本アプリケーションでは第2種地盤を重ねて表示できる。
5.4 図の保存 各図は PNG または SVG で保存できる。軸の範囲(上限・下限),線形・対数,文字の大きさおよび縦横比は図ごとに指定する。
参考文献
[5-1] 司 宏俊,翠川 三郎:断層タイプ及び地盤条件を考慮した最大加速度・最大速度の距離減衰式,日本建築学会構造系論文集,第523号,pp.63-70,1999,https://doi.org/10.3130/aijs.64.63_2[5-2] 平成12年建設省告示第1461号[5-3] 武村 雅之:日本列島およびその周辺地域に起こる浅発地震のマグニチュードと地震モーメントの関係,地震 第2輯,第43巻,第2号,pp.257-265,1990,https://doi.org/10.4294/zisin1948.43.2_257[5-4] 翠川 三郎,藤本 一雄,村松 郁栄:計測震度と旧気象庁震度および地震動強さの指標との関係,地域安全学会論文集,No.1,pp.51-56,1999,https://doi.org/10.11314/jisss.1.51
6. 例題
2026年(令和8年)熊本地震の記録を用いた例を示す。気象庁マグニチュード M j = 7.1,震源は北緯 32.626°,東経 130.680°,深さ 15.57 km の地殻内地震である。K-NET・KiK-net の3成分と気象庁の CSV をまとめて読み込ませ,既定の計算条件(ハイパス 0.05 Hz,Butterworth 4次,ゼロ位相,h = 5%,周期 0.02〜10 秒の対数等間隔200点)で処理した。震央距離 2〜23 km にある8観測点の結果を表6.1に示す。
表6.1 2026年熊本地震の記録による諸量(水平合成)
観測点 観測網 震源距離 X (km) 計測震度 I PGA (gal)PGV (cm/s)p S v 最大 (cm/s)その周期 (s) 宇城市松橋町 JMA 15.8 6.1 515 88.1 282 1.23 豊野 KiK-net 17.0 6.3 744 94.1 293 0.68 宇土 K-NET 17.1 6.0 667 69.8 221 1.40 三角 KiK-net 19.3 5.8 1606 52.1 164 0.27 八代 K-NET 21.9 5.7 464 133.6 259 3.15 八代市平山新町 JMA 23.9 5.9 363 95.4 253 1.74 熊本 K-NET 25.9 5.4 399 61.7 141 2.10 益城 KiK-net 27.8 6.1 707 81.5 224 0.77
6.1 計測震度の算出 宇土(K-NET KMM008)を例とする。3成分の加速度をフーリエ変換し,式(3.1)〜式(3.4)のフィルタを掛けて時刻歴に戻したうえで,各時刻でベクトル和をとったものが図6.1である。この値がある水準を超える時間の合計がちょうど 0.3 秒となるように水準を定めると a 0 = 361.2 cm/s2 が得られる。式(3.5)より I = 2 log 361.2 + 0.94 = 6.06 となり,小数第2位を切り捨てて計測震度は 6.0,震度階級では震度6強である。記録長は 300 秒であるが,図は最初の 90 秒を示している。
a0 = 361 gal 0 15 30 45 60 75 90 0 100 200 300 400 500 時間 (s) a (gal) 図6.1 宇土(K-NET KMM008)のフィルタ後の3成分ベクトル和。破線が a 0
6.2 距離減衰式との比較 式(5.2)より M w = 0.78×7.1 + 1.08 = 6.62 である。これを式(5.1)に代入して震源距離に対する最大速度を求めた値を表6.2に,曲線と観測値の対比を図6.2に示す。
表6.2 式(5.1)による最大速度と,式(5.3)による計測震度(M w = 6.62,D = 15.57 km,硬質地盤 V s 600,d = 0)
距離 X (km) PGV (cm/s)計測震度 I PGV ×1.31 (cm/s)5 37.0 5.4 48.5 10 24.6 5.1 32.3 20 14.4 4.7 18.8 50 5.8 4.0 7.6 100 2.4 3.3 3.2 200 0.8 2.5 1.0
八代 三角 熊本 10 20 50 100 200 3 10 30 100 300 震源距離 X (km) PGV (cm/s) 司・翠川 V s 600 同 ×1.31 (V s 400) 地表の観測値 図6.2 最大速度と震源距離。実線と破線が式(5.1),点が表6.1の観測値
観測値はいずれも実線の 3.5〜10 倍にあり,曲線から大きく上側に外れている。式(5.1)が与えるのは硬質地盤(V s 600)での値であり,表層地盤による増幅を含まないためである。破線は工学的基盤(V s 400)に換算する 1.31 倍であるが,これでも差は埋まらない。平野部の地表記録と比べるときは,この違いを前提とする必要がある。また,8点の震源距離は 16〜28 km に集まっており,この範囲で曲線が下がるのは 1.7 倍程度にすぎない。観測値のばらつきはそれを上回っており,距離よりも地点ごとの地盤の違いが効いていることが読み取れる。
最大速度から式(5.3)で換算した計測震度と,波形から直接求めた計測震度を比べると,差は最大で 0.6 である。長周期側が卓越する八代では換算値が大きめに出る。
6.3 応答スペクトル 宇土・熊本・益城の擬似速度応答スペクトル(水平合成,h = 5%)を,告示スペクトル L2(第2種地盤,Z = 1.0)と重ねたものが図6.3である。告示の値は表6.3による。
0.02 0.05 0.1 0.2 0.5 1 2 5 10 1 3 10 30 100 300 周期 T (s) pSv (cm/s) 宇土 熊本 益城 告示L2 第2種 図6.3 擬似速度応答スペクトルと告示スペクトル L2(第2種地盤,Z = 1.0)
益城は周期 0.8 秒付近で告示の 1.4 倍,宇土は周期 1.5 秒付近で 1.2 倍となる。熊本は周期 1 秒付近で告示の 0.4 倍にとどまり,周期 2 秒付近に山がある。同じ地震でも,卓越する周期は観測点ごとに異なる。
表6.3 告示スペクトル L2(第2種地盤,Z = 1.0)の値
周期 T (s) S a (cm/s2 )p S v (cm/s)
0.1 930 14.8 0.2 1200 38.2 0.4 1200 76.4 0.64 1200 122.2 1 1037 165.0 2 518 165.0 4 259 165.0
6.4 操作の手順
防災科学技術研究所の強震観測網[1-1] から,対象の地震の記録を tar.gz のまま取得する。
本アプリケーションの「1. データ」にそのファイルをドラッグする。K-NET・KiK-net の3成分が観測点ごとに自動で組になる。
「2. 震源」に値が設定されたことを確認し(気象庁 CSV があればその情報が優先される),必要に応じて修正する。
「3. 計算条件」の「計算する」をクリックする。既定ではハイパス 0.05 Hz,Butterworth 4次,ゼロ位相,h = 5%,周期 0.02〜10 秒(対数等間隔200点)で処理される。
「観測点の分布」と「距離との関係」で全体を概観し,注目する観測点をクリックしてチェックを入れると「比較」に波形とスペクトルが表示される。
「4. 出力(CSV)」から,加速度・速度・応答スペクトル・データベースを出力する。
7. 前提条件と適用範囲
KiK-net は地表の記録のみを用いる。地中の記録は読み込まない。
3成分がそろわない観測点は,水平合成および計測震度を求められない。
計測震度は気象庁の方法をそのまま実装したものであり,気象庁の発表値と完全に一致するとは限らない。
距離減衰式は,その式が前提とする距離の定義・地盤条件・マグニチュードの種類を確認のうえ用いる。
設定は .bcn 形式で保存および読込できる。
用語索引
本文に出てくる主な用語をまとめた。英数字で始まる語をABC順に,続けて日本語の語を五十音順に並べている。日本語の語には対応する英語を括弧で添えた。説明の末尾の括弧は,その用語を扱っている章である。
KiK-net 同じく防災科学技術研究所の観測網。地表と地中で同時に観測する。(1. データ ) K-NET 防災科学技術研究所が全国に展開する強震観測網。地表の記録を提供する。(1. データ ) PGA・PGV 最大加速度と最大速度。波形の最大値をとったもの。(3. 計算条件 ) Scale Factor K-NET・KiK-net の記録を物理量に換算するための係数。ヘッダに記載されている。(1. データ ) 擬似速度応答スペクトル(pseudo velocity response spectrum) 変位応答スペクトルに円振動数を掛けた量。単位は cm/s。(3. 計算条件 ) 距離減衰式(ground motion attenuation relation) マグニチュードと距離から地震動の大きさを推定する経験式。(5. 図 ) 計測震度(JMA seismic intensity) 気象庁が定めた方法で3成分の加速度から求める震度。震度階級の基礎となる。(3. 計算条件 ) 告示スペクトル(design spectrum specified by the Notification) 建築基準法の告示が定める加速度応答スペクトル。設計用の目安となる。(5. 図 ) 震央距離・震源距離(epicentral and hypocentral distance) 震央(真上の地点)までの水平距離と,震源までの斜め距離。(2. 震源 ) 水平合成(horizontal vector resultant) NS と EW の同じ時刻のベクトル和を求め,その最大値を用いる方法。(3. 計算条件 ) ゼロ位相フィルタ(zero-phase filter) 前向きと後ろ向きに1回ずつかけ,位相のずれを無くしたフィルタ。(3. 計算条件 ) モーメントマグニチュード(moment magnitude) 地震の規模を断層のすべり量から表した尺度。記号は Mw。(5. 図 )