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GAUGE の使い方
目次
1. 概要 2. データの準備 3. 入力と設定 4. 結果の読み方 5. 1軸の計算方法 6. 3軸の計算方法 7. 例題 8. 適用範囲と注意点 用語索引
1. 概要
本アプリケーションは,ひずみゲージの計測値(μ)から鋼材の応力(N/mm²)を算定するものである。鉄筋,鉄骨および鋼管の応力推定と,降伏の有無の判定を主な用途とする。
入力の種類は次の2つである。1軸では,1列を1枚のゲージとみなし,列ごとに独立に応力を算定する。硬化則は移動硬化,等方硬化および修正Menegotto-Pintoモデルから選択する。3軸では,直角3軸ロゼット(0°・45°・90°)の3列を1組とし,平面応力状態のvon Mises弾塑性として応力を算定する。
いずれも載荷履歴を1行ずつ追跡するため,除荷および繰返しを含む計測データをそのまま扱うことができる。計算はブラウザ内で完結し,データを外部に送信することはない。
2. データの準備
2.1 形式
入力はヘッダのないCSVとし,区切りはカンマ,タブまたは空白のいずれでもよい。値の単位は μ(×10⁻⁶)である。データロガーの出力に時刻,荷重,変位などの列が含まれる場合は,あらかじめ削除し,ひずみの列のみとする。
2.2 行の順序
1行を1計測ステップとして扱う。算定結果は載荷履歴に依存するため,行は計測の順に並べたまま用いる必要がある。行の並べ替えや途中の行の削除を行ってはならない。
2.3 ゼロ点
計算の初期状態は,ひずみ 0,応力 0 である。載荷前の計測値が 0 でない場合は,初期値を差し引いてから読み込む。
2.4 空欄の扱い
1軸では,空欄のセルは空欄のまま出力し,履歴は直前の有効な値から継続する。3軸では,1組の中に空欄が1つでも含まれる行は,その組を空欄として出力する。
2.5 ロゼットの軸番号
軸1を0°,軸2を90°,軸3を45°とし,軸1を x 軸,軸2を y 軸とする(図2.1)。直角3軸ロゼットによるひずみ計測の原理は文献[2-1] に詳しい。
1 (0°) 3 (45°) 2 (90°) x y
図2.1 ロゼットの軸番号
2.6 列の並び
CSVの1組3列が,どの軸の順に並んでいるかを「列の並び」で指定する。指定は全組に共通である。代表的な対応を表2.1に示す。
表2.1 CSVの列の順と列の並びの対応
CSVの列の順 列の並び
0°,90°,45° 1・2・3(既定)
0°,45°,90° 1・3・2
90°,45°,0° 2・3・1
列の並びを誤っても計算は停止しない。弾性範囲のデータについて,主応力 σ 1 ,σ 2 を手計算の値と比較し,指定の妥当性を確認することが望ましい。
参考文献
[2-1] Dally, J. W. and Riley, W. F.: Experimental Stress Analysis, 4th ed., College House Enterprises, 2005
3. 入力と設定
3.1 ヤング係数 E
既定値は 205000 N/mm² とした。材料試験の結果がある場合はその値を用いる。
3.2 降伏強度 f y
実験結果の分析には,ミルシートまたは引張試験による実強度を用いる。規格値(例えば SD345 では 345 N/mm²)は実強度より低いため,規格値を用いると降伏の判定が早期側となる。規格値の使用は概略の検討に限るのがよい。
3.3 降伏後の剛性比 β
降伏後の接線剛性を βE とする。推奨値は 0(完全弾塑性)である。鋼材は降伏後に降伏棚を示し,ゲージが有効に機能するひずみ範囲の多くはこの降伏棚の中にある。β > 0 とすると降伏棚の中でも応力が増加し,応力を過大に評価する。
3.4 ポアソン比 ν
3軸の場合にのみ用いる。鋼材では 0.3 とする。
3.5 硬化則の選び方
同一のひずみ履歴に対する3つの硬化則の応力–ひずみ関係を図3.1に示す。入力画面の図も同じ趣旨のものである。
-4000 -2000 0 2000 4000 -300 0 300 移動硬化 ε (μ) σ (N/mm2 ) -4000 -2000 0 2000 4000 -300 0 300 等方硬化 ε (μ) -4000 -2000 0 2000 4000 -300 0 300 修正Menegotto-Pinto ε (μ) 図3.1 硬化則の比較(E = 205000 N/mm2 ,f y = 345 N/mm2 ,β = 0.02,ひずみ履歴は 0 → ±1.5ε y → ±2.5ε y → 0,ε y = 1682.9 μ。破線は初期の降伏応力)
移動硬化は,弾性範囲の幅 2f y を保ったまま降伏面が移動するモデルである。等方硬化は,降伏面が拡大し,引張および圧縮の降伏応力がともに増加するモデルである。
修正Menegotto-Pintoモデルは,除荷後の再載荷において応力が曲線的に変化し,バウシンガー効果を表現できるモデルである。1軸にのみ適用する。計算式は5.2に示す。
単調載荷,または降伏前の繰返しのみを受ける場合は,いずれの硬化則でも結果は一致する。また,β = 0 のとき,移動硬化と等方硬化は同一の結果を与える。
降伏後に除荷および再載荷を受ける鉄筋の応力を評価する場合は,修正Menegotto-Pintoモデルが実挙動に近い。バイリニアモデルでは,荷重反転後に弾性のまま −f y 側まで戻るため,再降伏付近の応力を過大に評価する。
3.6 サブステップの上限
3軸の場合にのみ用いる。計測点間のひずみ増分を内部で分割して応力を更新するときの,1回の増分の上限を降伏ひずみ ε y に対する比で指定する。既定値は 0.1 であり,0 とすると分割しない。出力の行数は変わらない。詳細は6.4に示す。
3.7 設定の保存
画面上部の「設定」から,入力値(ゲージの種類,列の並び,材料定数,硬化則,サブステップの上限)を .gge ファイルとして保存し,後から読み込むことができる。CSVデータは保存の対象外である。
Web上で開いた Chrome または Edge では,「上書き保存」により同一のファイルに書き戻すことができる。その他の環境では,保存のたびにファイルをダウンロードする。
4. 結果の読み方
4.1 1軸の結果
結果の表には,列ごとのデータ数,ひずみの最大値・最小値および応力の最大値・最小値を示す。太字は降伏に達した列である。降伏の判定は,バイリニアモデルでは降伏条件に達したこと,修正Menegotto-Pintoモデルでは降伏点に相当するひずみを超えたことによる。出力するCSVは入力と同じ行・列の並びとし,各セルに応力(N/mm²)を示す。ヘッダは付さない。
4.2 3軸の結果
結果の表には,組ごとのデータ数,相当応力 σ eq の最大値,σ 1 の最大値および σ 2 の最小値を示す。太字は相当応力が降伏強度に達した組である。出力するCSVは1組あたり7列とし,その内容を表4.1に示す。表中の k は組の番号であり,応力の単位はいずれも N/mm² である。
表4.1 3軸の出力CSVの列
列名 内容
Rk _sx,Rk _sy σ x ,σ y (軸1,軸2の方向)
Rk _txy τ xy
Rk _s1,Rk _s2 最大主応力,最小主応力
Rk _theta 主応力方向 θ (°)
Rk _seq 相当応力 σ eq
5. 1軸の計算方法
5.1 バイリニア(移動硬化・等方硬化)
移動硬化および等方硬化では,各ステップで弾性試行応力を式(5.1)により求め,降伏条件 式(5.2)を満たさない場合に式(5.3)の塑性乗数 Δγ により,式(5.4)で応力を降伏点まで戻す(リターンマッピング)。ここで α は背応力(移動硬化),R はそのときの降伏応力(等方硬化),H は塑性係数である。
(5.1)
ここで,
σtr :弾性を仮定して求めた試行応力(N/mm²)σn :1つ前のステップの応力(N/mm²)E :ヤング係数(N/mm²)εn :1つ前のステップのひずみ
(5.2)
ここで,
f :降伏関数。0 以下であれば弾性,正であれば降伏しているα :背応力。移動硬化で降伏面の中心が動いた量(N/mm²)R :そのときの降伏応力。等方硬化では大きくなる(N/mm²)
(5.3)
(5.4)
ここで,
Δγ :塑性乗数。このステップで生じた塑性ひずみの大きさH :塑性係数(N/mm²)sgn :符号を返す関数。引張なら +1,圧縮なら −1
移動硬化では α を式(5.5)により更新し R = f y に固定する。等方硬化では α = 0 のまま R を式(5.6)により更新する。単軸引張における降伏後の接線剛性が βE となるよう,塑性係数は式(5.7)とした。
(5.5)
ここで,
α :背応力。移動硬化では降伏面の中心が移動し,弾性範囲の幅は変わらない(N/mm²)
(5.6)
ここで,
R :降伏応力。等方硬化では降伏面が拡大し,引張・圧縮とも降伏応力が増大する(N/mm²)
(5.7)
ここで,
H :塑性係数(N/mm²)β :降伏後の剛性比。降伏後の接線剛性を β E とするE :ヤング係数(N/mm²)
5.2 修正Menegotto-Pintoモデル
修正Menegotto-Pintoモデルは,Menegotto・Pinto[5-1] による曲線式に,Filippouら[5-2] が等方硬化の項を加えたモデルである。除荷後の再載荷において応力が曲線的に変化し,バウシンガー効果を表現できる。本アプリケーションは1軸にのみ適用し,係数は R 0 = 20,a 1 = 18.5,a 2 = 0.15 に固定した。等方硬化の項(a 3 ,a 4 )は考慮していない。
反転点から次の漸近線の交点へ向かう曲線を式(5.8)で与える。ε * は反転点で正規化したひずみ,R は曲線の丸みを表す係数であり,式(5.9)により反転ごとに更新する。ξ は反転前の塑性ひずみと交点ひずみの差を降伏ひずみで割った量である。
(5.8)
ここで,
σ* :反転点と漸近線の交点で正規化した応力ε* :同じく正規化したひずみβ :降伏後の剛性比R :曲線の丸み。小さいほど丸くなる
(5.9)
ここで,
R0 :反転前の R の値(20 に固定)a1 :係数(18.5 に固定)a2 :係数(0.15 に固定)ξ :反転前の塑性ひずみと交点ひずみの差を,降伏ひずみで割った量
参考文献
[5-1] Menegotto, M. and Pinto, P. E.: Method of Analysis for Cyclically Loaded R.C. Plane Frames Including Changes in Geometry and Non-elastic Behaviour of Elements under Combined Normal Force and Bending, IABSE Symposium on Resistance and Ultimate Deformability of Structures Acted on by Well Defined Repeated Loads, Final Report, Vol. 13, pp. 15-22, 1973, https://doi.org/10.5169/seals-13741[5-2] Filippou, F. C., Popov, E. P. and Bertero, V. V.: Effects of Bond Deterioration on Hysteretic Behavior of Reinforced Concrete Joints, Report No. UCB/EERC-83/19, Earthquake Engineering Research Center, University of California, Berkeley, 1983.8
6. 3軸の計算方法
6.1 ひずみ成分
3軸のひずみから,平面のひずみ成分を式(6.1)〜式(6.3)により求める。
(6.1)
(6.2)
(6.3)
ここで,
εx :x 方向の垂直ひずみεy :y 方向の垂直ひずみγxy :せん断ひずみε1 :軸1(0°)のゲージの値ε2 :軸2(90°)のゲージの値ε3 :軸3(45°)のゲージの値
6.2 弾性域の応力–ひずみ関係
弾性域における平面応力状態の応力–ひずみ関係(2軸のひずみ応力変換式)を式(6.4)〜式(6.6)に示す。弾性試行応力は,これらの式をひずみ増分に適用して求める。
(6.4)
(6.5)
(6.6)
ここで,
E :ヤング係数(N/mm²)ν :ポアソン比G :せん断弾性係数(N/mm²)
直交2軸ゲージ(0°・90°)で計測する場合は,ゲージの方向が主方向に一致すると仮定し,γ xy = 0 として式(6.4),式(6.5)を用いる。
6.3 降伏条件
降伏条件にはvon Misesの条件[6-1] を用いる。平面応力状態における相当応力 σ eq を式(6.7)で定義し,σ eq が降伏応力に達したときに降伏するものとする。単軸引張では σ eq = σ x となり,1軸の降伏強度と一致する。
(6.7)
ここで,
σeq :相当応力。単軸引張では引張応力に一致する(N/mm²)σx :x 方向の垂直応力(N/mm²)σy :y 方向の垂直応力(N/mm²)τxy :せん断応力(N/mm²)
6.4 応力の更新
各ステップのひずみ増分から,平面応力状態の弾性試行応力を求める。試行応力が降伏条件を満たさない場合は,Simo・Taylor[6-2] による平面応力のリターンマッピング法を用いて,応力を降伏面上に戻す。アルゴリズムの詳細は文献[6-3] を参照されたい。なお,ステップ間のひずみ経路は直線と仮定している。計測間隔が粗く,ステップ間でひずみ経路が大きく変化する場合には誤差を生じる。
解析では,第 n ステップの弾性試行応力を,前ステップの応力にひずみ増分による応力増分を加えて式(6.8)〜式(6.10)により求める。
(6.8)
(6.9)
(6.10)
ここで,
σx tr ,σy tr ,τxy tr :第 n ステップの弾性試行応力(N/mm²)σx (n−1 ) ,σy (n−1 ) ,τxy (n−1 ) :前ステップの応力(N/mm²)Δεx ,Δεy ,Δγxy :第 n ステップのひずみ増分
関係が線形であるため,弾性域では,増分を積み上げた応力は全ひずみを式(6.4)〜式(6.6)に代入した値と一致する。試行応力が降伏条件を超えた場合は,リターンマッピング法により応力を降伏面上に戻すため,降伏後の応力は式(6.4)〜式(6.6)の値とは一致しない。
硬化は線形とし,単軸引張における降伏後の接線剛性が βE となるよう,塑性係数を H = βE /(1 − β ) と定めた。
この誤差を抑制するため,計測点間のひずみ増分を内部で m 個に等分し,分割した増分ごとに応力を更新する(サブステップ分割)。分割数 m は,増分の最大成分 max(|Δε x |,|Δε y |,|Δγ xy |/2) が「サブステップの上限」×ε y 以下となるよう,ステップごとに定める。既定値は 0.1 であり,0 とすると分割しない。出力は元の計測点の行のみであり,行数は変わらない。ただし,計測点間のひずみ経路は直線と仮定したままであるため,実際の経路が計測点間で曲がる場合の誤差は除けない。根本的には,降伏付近や除荷の前後で計測間隔を細かくすることが望ましい。
6.5 主応力と主応力方向
主応力 σ 1 ,σ 2 および主応力方向 θ を式(6.11),式(6.12)により求める。
(6.11)
ここで,
σ1 :最大主応力(N/mm²)σ2 :最小主応力(N/mm²)
(6.12)
ここで,
θ :最大主応力の方向。軸1から軸3の側へ測った角度で,−90°〜90°
ここで,θ は最大主応力 σ 1 の方向であり,軸1から軸3の側(図2.1では時計回り)へ測った角度とする。値の範囲は −90°〜90° である。
6.6 初期降伏面の出力
「初期降伏面のCSV」は,主応力平面におけるvon Misesの降伏曲線(楕円)を出力する。σ 1 –σ 2 平面上の応力経路と重ねて描画することで,降伏面に対する応力状態の位置を確認できる。
例題における応力経路を図7.2に示す。
参考文献
[6-1] von Mises, R.: Mechanik der festen Körper im plastisch-deformablen Zustand, Nachrichten von der Gesellschaft der Wissenschaften zu Göttingen, Mathematisch-Physikalische Klasse, pp. 582-592, 1913[6-2] Simo, J. C. and Taylor, R. L.: A Return Mapping Algorithm for Plane Stress Elastoplasticity, International Journal for Numerical Methods in Engineering, Vol. 22, No. 3, pp. 649-670, 1986.3, https://doi.org/10.1002/nme.1620220310[6-3] Simo, J. C. and Hughes, T. J. R.: Computational Inelasticity, Springer, 1998, https://doi.org/10.1007/b98904
7. 例題
7.1 1軸(硬化則の比較)
降伏ひずみ ε y = f y /E = 1682.9 μ に対し,0 → +1.5ε y → −1.5ε y → +2.5ε y → −2.5ε y → 0 のひずみ履歴(301行×1列,各区間60分割)を与える。材料定数は E = 205000 N/mm2 ,f y = 345 N/mm2 ,β = 0.02 とした。結果を表7.1および図3.1に示す。
表7.1 1軸の例題の結果
硬化則 最大応力 (N/mm2 ) 最小応力 (N/mm2 ) 最終応力 (N/mm2 )
移動硬化 355.4 -355.4 338.1
等方硬化 390.1 -388.4 390.1
修正Menegotto-Pinto 348.4 -338.1 226.0
移動硬化では弾性範囲の幅が 2f y に保たれるため,最大応力は 355.4 N/mm2 にとどまる。等方硬化では降伏面が両側に拡大するため 390.1 N/mm2 まで上がる。修正Menegotto-Pintoでは除荷後の再載荷が曲線となり,同じひずみでも応力は小さめに評価される。ひずみを 0 に戻したときの残留応力にも差が生じる。
7.2 3軸(応力経路と降伏面)
0°・90°・45°のロゼットに対し,①まず ε x を 0 → 2500 μ,ε y = −ν ε x (単軸引張に相当)とし,②つぎに ε x を固定したまま ε y を 2500 μ 増やす。γ xy = 0 とし,ε 3 = (γ xy + ε 1 + ε 2 )/2 として入力する(160行×3列)。材料定数は E = 205000 N/mm2 ,ν = 0.3,f y = 345 N/mm2 ,β = 0 とした。
表7.2 3軸の例題の最終ステップ
σ x σ y τ xy σ 1 σ 2 θ (°)σ eq
294.0 379.8 0.0 379.8 294.0 -90 345.0
最終ステップの相当応力は 345.0 N/mm2 であり,降伏応力 345 N/mm2 と一致する。すなわち応力は降伏面上にとどまっている。主応力の履歴を図7.1に示す。
fy 0 40 80 120 160 0 100 200 300 400 σ1 σ2 σeq 行番号 N/mm2 図7.1 3軸の例題における主応力と相当応力の履歴
行番号 53 付近で σ 1 が降伏応力に達したのち,σ 1 は一度 345 N/mm2 を超えて 398 N/mm2 まで増加する。これは σ 2 が増えることで相当応力が降伏面に沿って移動するためであり,単軸の感覚で σ 1 と降伏応力を直接比較すると降伏の判定を誤ることがわかる。降伏の判定には相当応力 σ eq を用いる必要がある。
-345 0 345 -345 0 345 σ1 (N/mm 2 ) σ2 (N/mm 2 ) 初期降伏面 ① 単軸引張 ② 2軸引張へ σ1 ² − σ1 σ2 + σ2 ² = fy ² 図7.2 初期降伏面と応力経路の例(f y = 345 N/mm2 ,β = 0)
①の単軸引張では σ 2 = 0 のまま σ 1 が増加し,σ 1 = f y で降伏面に達する。②で σ 2 を増やすと,応力は降伏面上を移動して2軸引張の側へ向かう。完全弾塑性(β = 0)であるため,降伏後の応力は初期降伏面から外へは出ない。
8. 適用範囲と注意点
8.1 局所ひずみ
ゲージが計測するのは,貼付位置における表面の局所ひずみである。曲げを受ける鉄筋では表裏で値が大きく異なるため,軸力を評価する場合は対となるゲージの平均値を用いる。
8.2 ひずみ硬化
降伏棚の終了後に生じるひずみ硬化は考慮していない。したがって,大ひずみ域では応力を過小に評価する。
8.3 ゲージの測定範囲
製品仕様の測定範囲を超えた計測値は信頼性が低い。大ひずみ域を扱う場合は,大ひずみ用ゲージであることを確認する。
8.4 異常値
剥離,断線またはノイズによる飛び値やドリフトは,応力の履歴を誤らせる。変換の前に,ひずみの時刻歴を図化して確認することが望ましい。
8.5 局部座屈
局部座屈が生じた後の表面ひずみは,断面の応力を表さない。
8.6 初期応力
残留応力,およびゲージ貼付前に作用していた応力は 0 と仮定している。
8.7 平面応力の仮定
3軸では,鋼材表面が平面応力状態にあると仮定している。
用語索引
本文に出てくる主な用語をまとめた。英数字で始まる語をABC順に,続けて日本語の語を五十音順に並べている。日本語の語には対応する英語を括弧で添えた。説明の末尾の括弧は,その用語を扱っている章である。
von Mises の降伏条件(von Mises yield criterion) 相当応力が降伏応力に達したときに降伏するとみなす条件。(6. 3軸の計算方法 ) 移動硬化(kinematic hardening) 弾性範囲の幅を保ったまま降伏点が移動するモデル。(3. 入力と設定 ) 降伏棚(yield plateau) 鋼材が降伏したあと,応力がほぼ一定のまま伸びる領域。(3. 入力と設定 ) 降伏ひずみ(yield strain) 降伏強度をヤング係数で割った値。鋼材では 1500〜2000 μ 程度。(3. 入力と設定 ) 修正 Menegotto-Pinto モデル(modified Menegotto-Pinto model) 除荷・再載荷を曲線で表し,バウシンガー効果を再現できるモデル。(5. 1軸の計算方法 ) 主応力(principal stress) せん断応力が 0 となる向きの垂直応力。最大と最小の2つがある。(6. 3軸の計算方法 ) 相当応力(equivalent stress) 多軸の応力状態を単軸に換算した応力。降伏の判定に用いる。(6. 3軸の計算方法 ) 等方硬化(isotropic hardening) 降伏面が拡大し,引張・圧縮の降伏応力がともに増大するモデル。(3. 入力と設定 ) バウシンガー効果(Bauschinger effect) 引張で降伏させたあと圧縮すると,降伏応力が低下する現象。(5. 1軸の計算方法 ) ひずみゲージ(strain gauge) 貼り付けた位置の表面ひずみを測定するセンサ。値は μ(×10⁻⁶)で表す。(2. データの準備 ) ひずみ硬化(strain hardening) 降伏棚の後,応力が再び増加する現象。(8. 適用範囲と注意点 ) 平面応力(plane stress) 板の厚さ方向の応力を 0 とみなす状態。鋼材表面はこの状態にある。(6. 3軸の計算方法 ) リターンマッピング(return mapping) 試行応力が降伏面の外に出たとき,応力を降伏面上に戻す計算手順。(6. 3軸の計算方法 ) ロゼット(strain rosette) 向きの異なる3枚のゲージを1組にしたもの。面内のひずみ3成分が求まる。(6. 3軸の計算方法 )